資料番号46 栗原信近書簡


【解読文】

寸箋拝呈霜冷之候、
愈御壮健奉拝賀候、
扨過日鳥渡御咄し申上候
通り来ル十五日拡達社
会儀有之趣申来り候、
就而者兼テ承り及候
水道者仲間之衆人
其入費未済償却
法方未済ニ而難儀之
情実吐露存度候、
其面々当今之形勢
若し困難之事情に
乍御面倒御高認被下
彼ノヶ所江出張前迄も
私宅迄御届ケ被下
度御依頼申上候、
余者面上可申述候、
以上
三月十三日 若尾逸平
   栗原興産
(※青字は抹消部分)


【読み下し文】

寸箋拝呈霜冷の候、いよいよ御壮健拝賀たてまつり候。
さて、過日鳥渡(ちょっと)御咄し申し上げ候通り、来る十五日拡達社
会議これある趣申し来り候。ついては兼ねて承り及び候水道者仲間の衆人、その入費償却方法未済にて、難儀の情実吐露存じたく候。
その面々当今の形勢、もし困難の事情に、御面倒ながら御高認くだされ、かのヶ所え出張前迄も、私宅まで御届け下されたく、御依頼申し上げ候。余りは面上申し述ぶべく候。以上。
三月十三日 若尾逸平
 栗原興産(様)


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資料番号48 渋沢栄一書簡

【解読文】
筆翰拝読益御清適
奉賀候、過日ハ故大人 一
周忌日之由拝承候得共、
遠隔之土地ニて御墓参
も仕兼不本意之至ニ候、
御伝記序文之義ニ付而ハ
曽而小池君より御委
嘱有之、可成早く起艸
可及と御請申上候処、多
忙且避暑旅行等ニて大ニ
遷延いたし申訳無之候、
帰京後漸く浄書之
上差上候始末、或ハ機
会を失し候哉と恐縮仕候、
右不取敢拝復まて
いつれ其中御面話ニて
右申合仕たく
          匆々敬具
  九月九日
     渋沢栄一
若尾民造様
   拝復


【読み下し文】

筆翰拝読ますます御清適賀したてまつり候。過日は故大人一周忌日のよし拝承そうらえども、遠隔の土地にて御墓参もつかまつりかね、不本意の至りに候。
御伝記序文の義に付いては、かつて小池君より御委嘱これあり、なるべく早く起草に及ぶべしと御請け申し上げ候ところ、多忙かつ避暑旅行などにて、大いに遷延いたし申し訳これなく候。帰京後漸く浄書の上、差し上げ候始末、或は機会を失し候やと恐縮つかまつり候。
右取り敢えず拝復まで。いずれそのうち御面話にて右申し合いつかまつりたく。
匆々敬具
九月九日
渋沢栄一
若尾民造様
拝復


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資料番号51 佐竹作太郎書簡


【解読文】

時宜ニ依リテ権利ヲ主張シ又時宜ニ依リテ権利ヲ抛捨スルハ所謂臨機応変ト云フヘシ、今回ハ彼レニ数歩ヲ譲リ我ハベタ負ケナリ、負ケルトキハ立派ニ負ケテ毫モ未練ノ所為ヲ見セサルモ亦一策ナランカ。
甲府松本間ヲ此侭許可スルトキハ甲府以東ハ将来ノ調査上若シ充分ナラサルモ自然許可セサルヲ得サルノ責任政府ニアリ。
尚一歩ヲ進メテ之ヲ考フレハ調査上充分ナラサルトキハ政府ハ多少ノ補給ヲ為シテモ許可セサルヲ得サルベシ。
甲府松本間ノ営業ニテ本鉄道ガ独立シ得サル事ハ政府モ確ニ之ヲ認メタル事ハ今回ノ達シ文ニテ其証拠充分ナリトス。
甲府松本間ノ本免状ハ将来全線路ノ免状ヲ得ルノ階梯トスルニハ既存ノ仮免状ヨリ其効力大ナルベシ。
右ハ小生ガ久シク坐禅ノ効ニ依リテサトリヲ開キ人ニハ深ク厚ク依ルヘカラス、人ニ依ルハ只其事ノ階梯ノミト知ルヘシト云フト真理ヲ会得シ始メテ従来ノ悪意ヲ去リ今日以後ハ更ニ正道ニ復シテ将来ノ事ニ関シ愚見ヲ述ヘタルモノナレハ従来申上候旨意トハ丸デ反対ト御承知可被下候、左ハ去リナカラ今回ノ政府ノ処置ヲ以テ決シテ正当ナリトハ認メ不申(仮令サトリハ開キタリトモ)候へとも是ハ時勢不得止トアキラメ候外無之候、右愚意ヲ書シテ御一笑ニ附ス呵し。
 二十日     作太郎
      大木様


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